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幼児教育の質

8月31日付け朝日新聞より、慶応大学中室牧子教授の文を、少し長くなりますが再掲します。

 日本で幼児教育・保育の無償化が始まった2019年から遡ること22年。1997年にカナダのケベック州で保育所利用料が大幅に引き下げられた。この結果、保育所の利用者は増加し、就労する母親が増加したという。子供への影響はどうか。最新の研究によれば、利用料引き下げによる保育所利用の増加は、子供らが10~20代になった後の非認知能力、健康、犯罪関与などに負の影響があったという。特に男子に攻撃性や多動の問題が顕著だった。なぜこのような結果になったのか今後の研究が待たれるところだが、有力な仮説の一つが保育所増加に伴う保育の質の低下である。
 海外の研究といえ、これには重要な含意がある。教育はすれば必ず良い効果が得られるわけではないということだ。この研究が示す通り、長期にわたって負の影響が持続することもある。後世になって、日本で行われた無償化が、親の就労を増やすことには成功しても、子供の教育に悪影響があったなどと批判されることがないように、今私たちにできることは何か。
 まずは保育の質の現状をしることである。折しも昨年、保育の質が低下しているのではと疑われる事案が生じた。静岡県裾野市の保育所で、保育士による園児への暴行が発覚したのだ。その後、国が全国の認可保育所を調査したところ、不適切保育が914件、うち虐待が90件あったという。これを保育士の責任だと声高に叫ぶだけでは問題は解決しない。園児数に対して保育者の数が圧倒的に足りていないようなストレスフルな環境で生じたのだとすると、それは保育士個人の問題ではなく、もはや構造的な問題だからだ。不適切保育や虐待はないにせよ、全ての子供の発育がかなう保育を保障することが出来ているかも重要である。(以下略)

 日本でも、保育の質の低下は常々話題に上ることではあります。良質のとまではいかなくても、一定の質を伴わない保育を受けて小学校に入ってから不適応をおこすことは目に見えています。10年後20年後の話ではなくて目の前に負の影響が表れているようにも感じます。カナダの事例は日本で「いまそこ(ここ)にある危機」だと思います。
 かつで大きな話題になった小1プロブレムは現在はほとんど話題に上らなくなりました。無くなったのではありません。もはやそれが普通の状況になって話題する値打ちすらなくなって来ているからです。加えて小学校も人材不足にあえいでいます。日本がこれまで行ってきて、現に行われてる幼児教育や保育に関する施策が根本的に問われているのではないかとも感じます。
 手遅れになる前に教育・保育の質を維持できるように微力ながら頑張ります。それが教育機関としての幼稚園の使命だと信じるからです。
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